トップ > 法律相談Q&A > 労働 > 解雇・雇い止め > 整理解雇

労働事件法律相談Q&A労働:解雇・雇い止め

退職・解雇の基礎知識

整理解雇

私は、現在の勤務先である私立高校で20年近くにわたって英語の教師として教壇に立ってきました。ところが、この度、学園側から、少子化の影響で学園の経営状態が悪化してきたため人員削減が必要となったという理由で、私に対して解雇通告がなされました。解雇通告に先立って、退職者の募集など全くなされておらず、経費削減策が実施されたとはとても思えません。また、なぜ私が解雇対象者とされたのか何の事前の説明もありませんでした。このような解雇は許されますか。

整理解雇の本質と限界

企業の業績不振や組織変更の必要性など、使用者側の都合で、人員整理を行うために解雇という手段を使う場合を「整理解雇」と呼びます。設例の場合も、業績不振を理由とする解雇ということなので、この整理解雇の類型に該当すると言えます。

一般に、企業が業務縮小や組織改編などを決定することは、当該企業の専権に属する企業経営上の事項であるといえます。しかしながら、そのような決定権限があるからと言って、当然に企業が自由に従業員を解雇できることを意味するものではありません。終身雇用制を前提とするか否かにかかわらず、労働者は、雇用関係が将来にわたって安定的に継続するものであることを前提として生活設計をして、自分と家族の生活を支えています。ところが整理解雇は、労働者に何ら落ち度がないにもかかわらず、使用者側の経済的な理由により、一方的に労働者の働く場と生活手段を奪い、あるいは従前より不利な労働条件による他企業への転職等を余儀なくさせるものですから、これを無制限に認めたのでは著しく信義に反する結果を招き、何よりも労働者に深刻な影響をもたらすという帰結を生んでしまいます。労働者は、その労働の対価として賃金を得、その賃金によって生活をしているのですから、労働者に何らの帰責事由もないにもかかわらず、経営方針の変更など、経営者の都合によって解雇することは、原則として雇用契約上の信義則にも反するというべきです。

整理解雇の4要件
– 整理解雇が有効とされるための要件

このような考えから、これまでの多くの判例は、解雇権濫用法理(労働契約法16条)の1つの具体化として、労働者に帰責事由がない整理解雇について、その有効要件として整理解雇の4要件を設けてきました。すなわち、裁判例は、1970年代半ばから、 4つの要件を設けて解雇の有効・無効について判断してきました。
この4つの要件を整理すると、

  1. 人員削減の必要性が存在すること(人員整理の必要性)
  2. 人員削減の手段として整理解雇(指名解雇)を選択することの必要性、その前提として解雇回避努力義務が尽くされていること(解雇回避努力義務の履行)
  3. 解雇される者の選定が合理的であること(人選基準の合理性)
  4. 解雇手続きが妥当であること(説明・協議をすべき信義則上の義務の履行)

という項目に整理することができます。

(代表的な判例として、大村野上事件・長崎地裁大村支部昭和50年12月24日判決・労働判例242号14頁、東洋酸素事件・東京高裁昭和54年10月29日判決・労働判例330号71頁。最高裁判例として、あさひ保育園事件・最高裁昭和58年10月27日第1小法廷判決・労働判例427号63頁参照)。

整理解雇においては解雇の有効性に関する基準はとりわけ厳格なものが求められるべきであるとの観点からすると、整理解雇はこれら4要件のすべてを充足して初めて有効とする解釈に立つべきです。

法律相談Q&A

法律相談Q&A

法律相談
予約はこちらに

お気軽にお問合せください

092-721-1211

※お掛け間違いのないようにお願いします。

平日9:30~17:00
土曜9:30~12:00


平日、土曜日午前中
毎日実施中

初回法律相談予約専用Web仮予約はこちら