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有期労働契約の「雇止め」などに関する基礎知識

雇止め制限の法理とは何か

昨年、ある会社と契約期間を1年間と定めて有期労働契約を結び、働いてきました。私は、契約は当然更新されるものと思っていましたが、最近になって会社から、「人手が余っているから、契約期間が満了したら辞めてもらう。」と通告されました。もうすぐ期間満了ですが、満了した時点で契約は当然に終わるのですか。

雇止め制限の法理(判例法理)の法定化
(労働契約法19条)

有期雇用であるからといって、会社は期間が満了したら自由に契約を打ち切り、更新を拒否することができるというものではありません。なぜなら、これまで判例で形成されてきた「雇止め制限の法理」が存在しており、しかもそれが労働契約法上明文で規定されているからです。

判例による雇止め制限の法理

この改正労働契約法19条の前提となった雇止め制限の判例法理は次のようなものでした。まず一つは、反復更新された常用的臨時工の労働契約関係は、「実質的に期間の定めのない契約と変わりがない」ので、更新拒絶の意思表示は「解雇」と実質的に同じであり、したがって解雇に関する法規制が類推適用される、という理論であり、最高裁も、東芝柳町工場事件・昭和49年7月22日判決でこの理論を示しました。

その後、企業における有期労働契約の管理(更新手続など)が厳格に行われるようになって、更新の態様から「期間の定めのない労働契約と同視できるようなケース」は減少していきました。しかし裁判例は、こうした雇用管理の変化のみを理由に雇止めからの保護を否定することに疑問を抱き、反復更新された場合とは異なる新たな理論を展開しました。それは、有期契約が期間の定めのない労働契約と実質的に同視できない場合でも、「雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合」は、解雇権濫用法理を類推し、雇止めに合理的理由を求めるというものです。そして最高裁も、日立メディコ柏工場事件・昭和61年12月4日判決でこの理論を示しました。

労働契約法19条の内容

    1. 有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、更新拒否が、「解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できる」場合(同条1号)、あるいは、
    2. 契約が「更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」場合(同条2号)において、
  1. 労働者が、契約満了までに契約の更新の申込みをした場合又は契約満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合は、
  2. それに対する使用者の拒絶が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、
  3. 使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされる、というものです。

要するに、ア)契約が過去に何回も反復更新されて期限の定めのない労働契約と同一視できるような実態である場合、あるいは、イ)労働者が契約の更新を期待するのがもっともであり合理的だと考えられる事情がある場合には、使用者の更新拒絶に客観的に合理的な理由がなく、あるいは社会的正当性が認められないときは、更新拒絶は許されず、契約が更新されたものと見なされてそれまでと同一の労働条件で契約が続くことになります。

この内、ア)の要件は、契約が何回も更新されたという事実に着目するものですが、イ)の要件では、更新の回数が問題なのではなく、たとえ1回目の更新の場合においても、使用者が雇用継続を期待させる言動をしていたとか、その会社においては契約更新が通常となっているとか、または当該契約が結ばれた事情から更新が当然の前提となっていたと考えられる場合など、色々な事情を総合考慮して判断したとき、労働者が更新を期待するのがもっともだと考えられる場合はこの要件を満たすことになります。

また、条文上は、労働者が更新の申込みあるいは契約の申込みをしなければならないと記載されていますが、雇止めに対して労働者が「異議」や「不満」を述べることで、あるいは「訴訟を提起」することで、この「申込み」があったものとする趣旨であることが立法者意思として明確にされています。

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