消えた数値目標!? 男女共同参画基本計画の後退か?「第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」に関する意見公募について
弁護士:深堀 寿美
8月1日、政府は、「第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」に関するパブリックコメントの公募を開始しました。
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095200710&Mode=0
政府は、これまで、平成11年6月23日公布・施行の男女共同参画基本法に基づいて、男女共同参画社会の実現に向けて、具体的な政策を策定して実行をしてきました。
「男女共同参画社会」ってなんですか?ということについては、この法律の2条に定義があるのですが、要は、男女平等が実現できる社会だ、ということです。
政府は、この政策策定の中で、男女共同参画基本計画(第2次)(平成17年12月決定)において、2020年までに指導的地位に占める女性の割合が少なくとも30%程度になるように期待し、各分野における取り組みを促進することを明確に示しました。この政策目標のことを202030(にいまるにいまるさんまる)と言います。今年がこの2020年に当たります。男女共同参画の現状は具体的数値で確認してはいますが、第5次5か年計画の策定案の中には、第2次計画以来掲げてきた「いつ頃までに○%」という数値目標が全く示されなくなってしまいました。
「指導的地位に占める女性割合」とは難しい言葉遣いですが、要は、公的機関、役所などの課長などの管理職に女性が何パーセントいるか、審議会とか、地方議会、国会等において、また、民間の会社の取締役会等は何パーセント女性がいるか、という割合のことをいいます。これを15年後に「少なくとも」30%にしよう!と計画を立てたわけです。それなのに、日本の国会議員における女性割合の低さは、特に顕著ですし、毎年発表される政治・経済・健康・教育分野でどれほど男女平等が進んでいるかの国際的な指標(グローバルジェンダーギャップ指数:GGGI)の2019年版で、全体で日本は121位で、政治の分野では144位(参加153カ国中)です。だって、衆議院議員の10%程度しか女性がいないし、女性活躍推進を掲げていたはずの安倍政権、女性閣僚は一時期たった一人でしたし、現在でも2名しかいません。これで本当に「民主主義」といえるのか、と疑問を提する学者さんもおられます(「女性のいない民主主義」前田健太郎著、岩波新書2019年)。
2005年に202030計画が決定され、加えて2013年には東京オリンピック開催が決定され、「2020年、女性割合は30%、東京オリンピックの金メダル獲得数も30個!」とかいうバラ色の将来を思い描いたものでした。女性割合の達成ができないことは年々感じてきましたが、とうとうオリンピックも延期、女性割合の数値目標も消失、ということになって散々な2020年夏、です。
このボタンを押したら、現状はすべて解決する、なんて夢の政策はないのですが、いずれにせよ、何らかの方法で手を尽くしていかねばならない問題です。パブコメの募集期間は2020年8月1日(土)~2020年9月7日(月)だそうですので、皆さんも是非、「こうした方がいい」という意見を述べられてみてはいかがでしょうか。