HPVワクチン薬害訴訟報告-原告側専門家証人の尋問始まる②
HPVワクチン(子宮頸がんワクチンと称されている)の接種により、重篤な副反応に苦しんでいる被害者が製薬企業2社と国を相手にした訴訟で、8月21日に東京地裁で椿広計(つばきひろえ)先生の尋問がありました。
椿先生は、応用統計学の第一人者であり、薬事分野では、日本における薬効判定・臨床試験評価システムの基盤作りに重要な役割を果たされてきました。HPVワクチン副反応に関しては、いわゆる名古屋調査(名古屋市子宮頸がん予防接種調査)のデータを解析し、調査された症状の一部とHPVワクチン接種との関連を示唆する結果が得られたとする論文(共著)を2019年に発表しています。
椿先生は、名古屋調査をはじめとした、被告側が安全性の根拠として主張している国内外の疫学調査の限界や問題点から、それらの調査では因果関係を否定することはできず、むしろ因果関係を示唆する結果が表れていることを証言されました。
例えば、名古屋調査の結果の解析をした鈴木・細野論文では、接種あり群と接種なし群の症状発症リスクを「報告されている24種類のHPVワクチン接種後症状のいずれについても、発症率の有意な上昇は認められなかった」として、「HPVワクチンと報告されている症状との間に因果関係はないことが示唆される」と結論づけており、これを被告が証拠としています。
しかし、椿先生は、統計的有意差が認められなかったとは、単にデータが証拠不十分であることにすぎず「差がない」ことが証明されたわけではなく、よりサンプルサイズを大きくすることなどによって、有意差が検出される可能性はあることを証言されました。
また、被告が証拠にしている祖父江班調査の結論は「HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を呈する者が、一定数存在した」とされていますが、椿先生は、ある症状を呈する人が一定数いるというのは当たり前のことで、このことからはワクチンの安全性の根拠にならないこと、寧ろ、ほとんどの症状(41のうち、37個)において接種あり群の有症割合の方が高いことから危険性のシグナルと受け止めるべきこと、特に運動障害や認知機能の障害については、より顕著に全ての症状(11個)について接種あり群の有症割合が高いこと、このような結果が出た場合にはさらにハイリスク探索ないしは検証的研究が必要であることを証言されました。