中山篤志 弁護士記事

2025年3月23日(日)

すぐれた伴走本とは?

1.某市民公園でパラリンピック金メダリストの道下美里選手が伴走ランナーと一緒に練習をされている場面に何度か遭遇しました。私は2回彼女を追いかけてみましたが、当然のことながら全く歯が立ちませんでした(赤面)。
読書にも手助けとなる伴走ランナーならぬ伴走本というべきものがあります。
2.源氏物語には、「源氏物語解剖図鑑」という優れた伴走本があります。54帖それぞれに見開き2頁を割いて、簡単なストーリーや見所以外にも平安時代の貴族の暮らし、風習、文化、信仰をイラスト付きで紹介しており、文字情報しかない物語のイメージが色彩豊かな「絵巻物」に近づくこと請け合いです。私はこれを伴走本として読み進めていきました。なお、この種の解説本は類書も色々あるようです。
サラダ記念日の俵万智氏による「愛する源氏物語」(文春文庫)は、物語中で詠まれている和歌についての解説を中心にした伴走本です。この本に出合うまでは角田光代版の現代語訳が非常に分り易かったこともあって和歌を味わうことなく読み流していました。しかし、作中の和歌1首1首にこめた紫式部の思いやテクニックに関する俵万智氏の解説は目から鱗でした。例えば、末摘花は気が利かない女性として描かれていますが、彼女の詠む和歌も気が利かないセンスのない歌になっているそうです。その駄目さ加減の解説がされており、現代語訳からでは掴めないものです。まさに本編の理解を深める優れた伴走本だと思います。
3.昨年、文庫本にならないと言われていた「百年の孤独」(ガブリエル・ガルシア=マルケス)が文庫本になりました。ホセ・アルカディオ・ブエンディアらを始祖とするブエンディア一族が蜃気楼の村マコンドを創設し、隆盛を迎え、やがて滅亡するまでの100年間を描く大河小説です。文庫化を機に再読しましたが、「百年の孤独を代わりに読む」(友田とん:早川書房)という伴走本を見つけました。
「代わりに読む」とは、ある書物を読む人の心に立ち上がる驚きやワクワクを場面場面で連想されたものに脱線しながら伝えるということのようです(?)。
例えば、ホセ・アルカディオ・ブエンディが決闘で殺した亡霊に足を洗うためのたらいを出して幽霊を受け入れる場面については、起きている現実を受け入れるというテーマでドリフターズのタクシーのコント(いかりや長介が乗客として乗ったタクシーの運転手[加藤茶が扮します]はお人よしで偶然歩道で見つけた知り合いを次々に乗せていき満員になっていくもののいかりや長介は拒めないというもの)に脱線していきます。
百科事典の暗記に情熱を傾けるアウレリャノの下りでは、「笑っていいとも」の1コーナーにあった「タモリのスーパー記憶術」や「円周率10万桁への挑戦」という本に脱線します。1978年生まれの作者に近い世代の人が共感できる脱線が満載です。
ということで私が優れていると思えた伴走本3冊を御紹介しました。
余談ですが、「百年の孤独」の文庫版には筒井康隆氏が解説を書いており、大江健三郎の「同時代ゲーム」の全体がマジックリアリズム(現実と非現実が入り混じる不思議な世界観や表現技法)志向であり最高傑作たるゆえんだと評していました。ガルシア=マルケスと「同時代ゲーム」が大好きな私としては非常に嬉しい指摘でした。

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