生活できる年金を求めて
1 年金の減額をする法律は憲法違反だという裁判を行っていました。
内容を少しだけ簡単に紹介すると、年金は物価にも連動して増減させることになっています。平成12年から3年間は、本来ならば物価が下がり年金を減額することになるのですが、景気対策のために減額しなかったのです。
その修正は年金を増額すべき年に完全には増額をせずに埋め合わせるという予定でした。しかしその約束に反して、平成25年から3年間、増額のない年にこの分の減額をしたのです。この減額を争いました。
地裁、高裁、最高裁含めて(約)90連敗という結果でした。福岡と佐賀で起こした裁判も、今年5月に最高裁で敗訴が確定しました。39地裁5295人原告の大訴訟でしたが、国民の代表である国会で作った法律を争うのは、たいへん厚い壁がありました。
2 しかし、この裁判を起こした効果はあったと思っています。私たちの福岡・佐賀訴訟をはじめ、ほとんどの地裁で原告本人、学者、現役労働者などの証人尋問が行われました。毎回の意見陳述も行いました。高齢者のきびしい生活状況を説明し、生活できる年金をと訴え続けたのです。現役労働者にも厚生年金のない不正規労働の実態や、将来の不安を語ってもらいました。
年金者組合という年金受給者の労働組合が裁判を担ったのですが、街宣や対マスコミの活動などでも頑張りました。
3 その迫力ある陳述の力で、最高裁の判決では「このような年金の給付のみでは、ほかに収入や資産がない者の生活の安定を図ることが困難」「必要な給付や支援を円滑に受けられることが肝要」との補足意見を勝ち取ることができました。
また、この訴訟では、全国の学者研究者約20名に意見書作成や証人尋問の協力をいただきました。憲法や福祉法の分野、条約の分野、統計調査の分野、経済学などの分野の専門家です。年金分野での学者の関心は大きくなっていきました。今後の年金制度改正の局面で、影響力のある意見を出していただけるのではないかと期待しています。
当初は反発もありながらも、世論も広がりを見せました。マスコミ報道は相当に活発化し、厚労省が老後の生活には年金のほかに2000万円が必要との報告を行った際には、国民の間に大きな怒りが広がりました。今回の選挙を見ても、ほとんどの政党が年金問題を位置づけていました(もちろん評価できる政策も、そうでない政策もあるのですが)。世論の関心の高まりを受けて、厚労省も国民年金の増額について検討を始めたということが報道されています。
4 国は裁判で「世代間の公平」「制度を持続させる必要がある」などと主張しました。しかし、今の給付を受ける世代が積み立てた年金基金は株価の維持のために使われています。また、非正規労働者をなくす政策をとろうともせず、正職として厚生年金を掛ける労働者を増やそうとしていません。そもそも年金のために拠出される税金も、他の先進国と比べて少ないものとなっています。
これらのつけを給付の削減で埋め合わせようとするのはおかしなことだと思っています。年金制度をよりよいものにするため、最低保証年金制度をつくるため、今後も声をあげていきたいと思っています。