AIと著作権
■生成AIで遊ぶ
生成AIという言葉も耳なじみのある言葉になってきました。
弁護士業界ではまだまだ参考程度にしか利用されていませんが、将来的には、弁護士業界でも生成AIを業務上いかに活用するかが重要になってくる時代になるだろうと思います。パソコンと同じように、生成AIを使えてあたり前の世界がくるでしょう。
私も「ChatGPT」で遊んだことがあります。福岡市内の法律事務所を教えてと聞くといくつかの事務所が紹介され、なぜその事務所を選んだのですかと聞くとその理由がもっともらしく説明されます。業界人としてはその理由に納得はいかないのですが、なるほどこういう視点で検索されるのだなということがわかり興味深いです。
こういう絵を描いてと書き込むと、AIが絵を作成してくれます。これは面白いです。先日、ChatGPTに「猫バスがトトロにつまずいて転ぶ場面の絵を描いて」と入力したところ、次のような注意書きがでました。
「猫バスやトトロはスタジオジブリの「となりのトトロ」のキャラクターであり、著作権で保護されています。そのため、直接その場面を描くことはできません。しかし、同じようなテーマや雰囲気を持つオリジナルの場面を作成することは可能です。
例えば、森の中で不思議なバスのような生き物が、巨大で優しい森の守護者につまずいて転ぶシーンを想像して作成することができます。この場面では、柔らかな光が差し込む森の中で、バスの形をした動物が大きな生物につまずき、少しコミカルな表情をしている様子を描けます。」
なるほど、著作権で保護されたものは描けないと指摘してくるのは優秀。しかも、代替案の提案まであるとは。ということで、「森の中で不思議なバスのような生き物が、巨大で優しい森の守護者につまずいて転ぶシーン」を描いてもらいました。結果、トトロの世界観は微塵もないものの、なかなか面白い絵ができました。
■著作権問題はホットな話題
閑話休題。今回の本論は、AIと著作権の問題について、簡単にご紹介するものです。
2023年(令和5年)6月19日に文化庁著作権課が「AIと著作権」というセミナーを開催しました。2024年(令和6年)3月15日には文化審議会著作権分科会法制度小委員会が「AIと著作権に関する考え方について」を公表し、8月9日には文化庁著作権課が「AIと著作権Ⅱ」というセミナーを開催しました。
文化庁「AIと著作権について」詳しくはコチラ↓
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
AIについては法規制がいまだ追いついておらず、特に生成AIによる著作権侵害の状況は深刻な状況です。そのため、国でも早急にこの点の検討がなされているようです。
皆さまも、他者の著作物を不用意にSNSにあげてしまうことのないよう、十分にご注意ください。
■生成AIと著作権
さて、文化庁セミナーの「AIと著作権」のレジュメの中から、興味深い情報と思われる部分をご参考に一部だけ紹介いたします。興味を持たれた方は、ぜひ上記URL文化庁ホームページをご覧になってください。
著作権法の基本的な考え方
著作者等の権利・利益を保護することとと、著作物を円滑に利用できることのバランスをとること
・著作権法の「著作物」の定義(法2条1項1号)
➀思想又は感情を ②創作的に ③表現したものであって、
④文芸、学術、美術又は音楽の範囲にぞくするもの
➢ 著作物でないもの(単なるデータ(事実)やありふれた表現、表現でないアイディア(作風・画風など))は、著作権法による保護の対象ではない。
・著作者の権利
著作物の利用の形態ごとに権利が定められている。
著作権(複製権、上演権・演奏権、上映権、公衆送信権=ネットアップロード、公の伝達権、口述権、展示権、譲渡権、貸与権、頒布権、二次的著作物の創作権、二次的著作物の利用権)
著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)
・著作権侵害の要件
➀類似性=後発の作品が既存の著作物と同一、又は類似していること
➢ありふれた表現、アイディア、単なる事実は類似性なし
②依拠性=既存の著作物に依拠して複製等がされたこと
➢偶然の一致、独自創作は依拠性なし
裁判例では、この両方を満たすことが必要とされている。
・著作権侵害に対する制裁
民事:著作権者は、侵害行為の停止・予防措置の請求、損害賠償請求等が可能
刑事:10年以下の懲役もしくは1000万円以下(法人は3億円以下)の罰金又はその両方。ただし、原則として権利者による告訴が必要な親告罪。
・許諾を得ずに利用できる主な場合
私的使用のための複製(30条)
引用(32条)
学校その他の教育機関における複製等(35条)
非営利・無料・無報酬での上演等(38条)
AIと著作権(生成・利用段階)
・著作権侵害になるか否かは、類似性及び依拠性によって判断する。
➢通常の著作権侵害の判断基準と基本的には変わらない。
・既存の著作物との類似性及び依拠性が認められるAI生成物について、アップロードや販売を行うには、既存の著作物の著作権者の利用許諾が必要であり、許諾なく行った場合は著作権侵害となる。
・依拠性の有無は、個別の作品ごとに、最終的には裁判所の判断。
・著作権者は、著作権侵害がある場合、差し止め請求、損害賠償請求、被害申告・刑事告訴等の対応が考えられる。
以上、参考情報でした。