注釈の多い青春のうた
ふとした瞬間に懐かしい歌が口をついて出てくることって、ありますよね。
歌いながら自分でもなんでこの歌？なつかしい、と思うような。
先日、帰り道で、チェッカーズの「涙のリクエスト」が頭の中に流れました。
おお、懐かしい！と思いながら、ちょっと歌ってみる。
「最後のコインに 祈りをこめて ミッドナイトＤＪ
ダイヤル回す あの娘（こ）に伝えて まだ好きだよと
トランジスタのヴォリューム上げて 初めて二人
踊った曲さ さよならなんて 冷たすぎるね
ひどい仕打ちさ」
うんうん、これこれ。
小学生のとき、チェッカーズのカセットアルバム「絶対チェッカーズ！！」をお年玉で購入した思いで。生まれて初めて買ったアルバムがこれでした。
青春というにはちょっとだけ早いけど、今から見るとまぎれもない青春の１ページ。
あれ？でも待てよ？
この歌詞って、今の若い人は理解できるのかな？？
昭和世代に説明は不要ですが、平成世代、令和世代は、もはや何を言っているかわからない内容なのでは？？
ということで、若い人にも理解できるように私なりに注釈をつけてみます。
「最後のコインに 祈りをこめて ミッドナイトＤＪ」
のっけから「最後のコイン」？？
なんでコイン？ゲーセンのコイン？コイントスして裏表占いでもするの？
この歌詞を理解するためには、情景が浮かぶ必要がありますね。
この曲は、ラジオのＤＪにふたりの思い出の曲のリクエストをするという歌です。
リクエスト方法は、今だったら、Ｘとかインスタとか。昭和は違います。もちろん、「電話」です！携帯電話なんてものはありません。でっかい据え置き型の電話です。
「コイン」を入れて使う電話といえば、今は希少な「公衆電話」です。そう、「コイン」というのは、現金、小銭のことです。10円玉か、100円玉です。10円で話せる時間は約1分だったので、ＤＪに曲のリクエストをする時間を考えると、この「コイン」は100円玉だったのでしょう。100円だと9分くらい話せたようです。ちょうどいい。
曲の男性は、100円玉が最後のコインと言っているので、貧乏なのですかね。それか、小銭が最後というだけだったのか。若い男性のようなので、たぶん貧乏だったんだろうなあ。
というわけで、100円玉を公衆電話に入れて、ＤＪのラジオ番組に思い出の曲をリクエストするぞ！という歌いだしでした。
「ダイヤル回す あの娘（こ）に伝えて まだ好きだよと」
なぞの「ダイヤル回す」？？
これはもう、平成二けた世代には「ちょっと何言ってるかわかんないです」でしょうね。
公衆電話は聞いたことがあっても、「ダイヤル回す」ってどういうこと？わかります。がっつり昭和の言葉です。
現存する絶滅危惧種の公衆電話は、番号がボタン式になっています。１～９の数字プラスアルファのボタンが並んでいるものです。これでは「ダイヤル回す」ことができません！？（昭和世代の中にはボタンを押すことも「ダイヤル回す」という人もいますが、そこはもう。。。）
「ダイヤル」というのは、昭和の電話の円形数字盤のことなんです。円形で、右斜め上（アナログ時計で言うと2時くらいのところ）に数字の「１」が書いてあり、そこから逆時計回りに２，３，４…９，０が書いてあります。文字の円盤より若干小さなもう一つの円盤があり、数字の下あたりに穴が開いていて、そこに指を入れて右に回すとその番号を選んだことになるんです。文字で表現するのが難しい。指を入れて右回りに円盤を回すことを「ダイヤル回す」と言いました。
ちなみに、ダイヤル式の公衆電話は、主にピンク色の電話機でしたので、このかっこいい曲の情景を思い浮かべる時はピンクのでっかい電話機を思い浮かべましょう。
「あの娘」あのちゃんはまだ存在していませんね。
「トランジスタのヴォリューム上げて 初めて二人」
昭和レトロでは欠かせない魅惑の「トランジスタ」！
トランジスタラジオのことを昭和世代はかっこよく「トランジスタ」と言いました。「ラジオ」とは呼ばず、あえて部品の名称で呼ぶというところが昭和のかっこよさ。
ラジオ番組へのリクエストなので、まあここまで来れば意味はわかりますよね。
というわけで、その時代の物品を歌詞に入れ込んだ場合、時代が違うともう意味が分からない！（昭和世代はこれを「わけわかめ」と言います。）ということ、ありますね。
たぶん、平成世代にはわかるけど昭和世代にはわけわかめ！という逆バージョンもあるのでしょうね。
ちなみに、当時小学生低学年の私、「ひどい仕打ちさ」を耳で聴いたときは、「ひど石 打ちさ」と思い、「ひど石」ってどんな石なんだろう？それで打つってのは何をするんだろう？と思っていたのはご愛敬。
