子どもの「無戸籍」問題を知ってください
無戸籍問題の当事者の方は2025年3月末日までなら嫡出否認が可能です!
いろいろと説明する前に、知られていないけれど大事なことをひとつ。
2024年4月1日施行の民法改正によって、子どもや母が嫡出(ちゃくしゅつ)推定を受ける子について嫡出否認の訴えを提起することができるようになりました。
この改正は、2024年4月1日以降に生まれる子に適用されるのですが、例外として、2024年4月1日より前に生まれた子(成人していても可)についても、2025年3月末日までの間に限り、嫡出否認の訴えを提起することができます。
2024年4月1日よりも前に生まれた子は、今だけ、いつ生まれたかに関係なく何歳でも嫡出否認の訴えが可能なのです。施行日から1年間という期間制限があるので、当事者の方は早めに法務局または弁護士にご相談ください!
無戸籍問題をご存じでしょうか
DVなどさまざまな理由で子どもの出生届が役所に提出されない場合に、その子の戸籍がつくられないままになるという問題がおこります。なかには、成人していてもいまだに戸籍がないという方もいます。
典型例は、夫のDVから逃れている間に夫以外の男性との子を妊娠、出産したもののDV夫の戸籍に子どもが載らないようにするため出生届を出さなかったというケースや、親がネグレクトで出生届が出されていないというケースなどですが、このような場合に限らず、本当にさまざまな場合があります。
なお、出生届を出す際に、DV夫の存在を無視して実際の血縁上の父を子どもの父親であると記載しても、その出生届は受け付けられませんでした。
国による無戸籍問題の解消に向けた取り組み
無戸籍問題がクローズアップされるようになったのは、2014年(平成26年)頃からで、2016年(平成28年)頃からは国による無戸籍解消の動きも始まりました。
各地の地方自治体や法務局が無戸籍の相談を受け、その解消に向けて支援をする体制が設けられ、各地の弁護士会と連携した支援を行うようになっています。
法務省の無戸籍問題に関するホームページ
「無戸籍でお困りの方へ」
また、現場での支援と同時にすすめられたのが、「民法改正」です。
実は、無戸籍問題の大きな原因のひとつは、民法の「嫡出(ちゃくしゅつ)推定」という制度(旧民法772条)にありました。嫡出推定制度のもとでは、婚姻解消(離婚)の日から300日以内に生まれた子は、元夫の子どもであると推定され、血縁上の父の存在とは無関係に、元夫がその子の戸籍上の父とされていました。
例えば、DV夫と別居後もなかなか離婚に応じてもらえず、離婚成立前後に夫以外の男性の子どもを妊娠し、DV夫の離婚から300日以内にその子どもを出産した場合、血縁上の父ではなく、DV夫が戸籍上の父親になります。場合によっては、DV夫が血縁関係のない子どもをダシにして元妻の情報を探るということもあり得ます。このようなリスクを避けるために出生届が出されず、その子の戸籍がつくられない、という事態が生じていました。
そこで、国は、2022年12月に、この嫡出推定制度やその関連制度を変更するため「民法改正」を行い、改正された民法が2024年4月1日から施行されています。
民法改正のポイント
無戸籍問題に関係する民法改正のポイントは2つです。
➀ 嫡出推定制度の見直し(女性の再婚禁止期間の廃止もセット)
ポイントになるのは、離婚の日から300日以内に生まれた子について、母が再婚していれば、再婚後の夫の子と推定されることになるという点です。ただし、もし出産前に再婚していなければ、これまでと同様に、前夫の子と推定されることになるので注意が必要です。
➁ 嫡出否認制度の見直し
法律上、夫の子と推定される場合に、実際には血縁上の父が別にいるという場合、夫と子どもの親子関係を否定するためには、家庭裁判所に「嫡出否認」の訴えを起こす必要があります。これをしない限り、戸籍上は親子関係にあるということが確定します。
嫡出否認の訴えは、旧民法では戸籍上の父のみが、子の出生を知った時から1年以内に限り提起することができるとされていました。
民法改正によって、戸籍上の父に加えて、子どもまたは母も、この出生の時から3年に限り(戸籍上の父は子の出生を知った時から3年)、嫡出否認の訴えを提起することができることになりました。
嫡出否認が認められると、子どもと戸籍上の父の親子関係は否定され、戸籍の父親欄は空白になります。子どもまたは母は、別途血縁上の父に対し子どもの認知を求めることが可能になります。
無戸籍の方は早めにご相談を
無戸籍問題は、法的に解決が可能です。いま、戸籍がないとか、自分の子どもの出生届を出していないという方は、ぜひ一度、法務局や弁護士にご相談ください。