「脱ハンコ」時代における印鑑登録証明書(印鑑証明)
1 「脱ハンコ」と印鑑登録証明書
政府による「脱ハンコ」の推進が行われています。これにより、従来、行政手続きで必要だった押印のうち、ほどんどが廃止されると言われています。
例えば、2021年に、婚姻届や離婚届は本人の署名のみで届け出ることができるようになっています。なお、法務省は、例外として、希望する人については引き続き押印を認めています。また、同年に行われた税制改正により、税務署長等に提出する税務関係書類(確定申告など、国税・地方税を申告する書類)への押印も廃止となりました。
一方で、現在もなお押印が継続される行政手続きも存在します。その多くが、「印鑑登録証明書」(いわゆる「印鑑証明」)が求められる手続きです。そこで、今回は印鑑登録証明書についてお話したいと思います。
2 印鑑登録証明書とは
「印鑑登録証明書」とは、書類に押された印影(ハンコを押した時に書類に写される朱肉の跡)が、書類の作成者が所有するハンコと一致していることを公的機関が証明する書面です。
個人が印鑑登録証明書を取得するには、まず公的機関(市区町村)へのハンコの登録が必要になります。このとき登録するハンコを「実印」といいます。そして、ハンコを登録する際には、「印鑑登録証」が発行されます。印鑑登録証は、カード型になっており、市区町村役場などで印鑑登録証明書を発行する受ける際に必要となるものです(なお、コンビニで印鑑登録証明書の発行を受ける場合は、印鑑登録証は不要ですが、代わりに印鑑登録をしている人のマイナンバーカードが必要となります。)。
つまり、印鑑登録証明書は、実印による押印が必要な契約や申請の書類が、実印の所有者によって作成されたことを証明する役割を果たすのです。
3 印鑑登録証明書を必要とする場面
印鑑登録証明書の身近な利用場面として、自動車登録をする場面が挙げられます。自動車を購入する際には、自動車の所有権を明らかにするためと行政が自動車を識別・把握するためという2つの目的から、行政への自動車登録が義務付けられています。この自動車登録する際の提出書類として、印鑑登録証明書が求められています。
また、不動産の所有権を移転する場面、遺産分割協議書を作成する場面、公正証書を作成する場面などでも印鑑登録証明書が必要となります。
4 最後に
このように、「脱ハンコ」が推進されている現在でも、印鑑登録証明書は、書類に押印されている実印の所有者によって書類が作成されたことを証明し、本人確認や本人の意思確認を厳格に行う必要がある場面で用いられているのです。
逆に言えば、印鑑登録証明書と実印が押印された書類があれば、その書類について本人確認や本人の意思確認が行われたと推定されるということになります。
そのため、当たり前のことかもしれませんが、実印や印鑑登録証はもちろん、印鑑登録証明書の取り扱いについても、慎重に行うよう心がけることをご提案する次第です。