河西龍介 弁護士記事

2023年12月12日(火)

技能実習生制度って知っていますか?

1 はじめに

私が司法修習生だったころ、指導担当弁護士の技能実習生に向けた講義に立ち会ったことがあります。当時の私は、技能実習生制度についてあまり知識がありませんでしたが、弁護士にはこのような仕事もあるのだなぁと、改めて弁護士の仕事の範囲の広さを感じたものでした。
最近様々な分野でよく外国人従業員を見かけるなぁと思っている方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は技能実習生制度についてお話したいと思います。

2 技能実習生制度とは

技能実習生制度とは、アジアの諸外国などの外国人を日本で一定期間(最長5年)に限り受け入れ、日常の業務につきながら職業教育を行うという制度です。高齢化が進み、特に地方で労働力が減少している日本にとっては、技能実習生は、人手が不足している分野における人材として大いに貢献しています。また、技能実習生は、日本の技術やノウハウを学び、母国に帰国した後その知識を活用し、母国の産業発展に貢献しています。
現在、技能実習生として日本に在留している外国人は、184,193人となっています(2023年8月現在、出入国管理庁)。また、技能実習生を受け入れている業種は多種多様ですが、多くの技能実習生を受け入れている業種としては、飲食料品製造業(55,553人)、工業系製造業(37,130人)、介護業(23,587人)、農業(22,008人)、建設業(20,497人)などがあります。

3 技能実習制度の抱える問題

技能実習制度は、国内の人材不足を補うとともに、技能実習生の母国への技術移転を図るため貢献している制度ではありますが、一方で、この制度は様々な問題を抱えています。
技能実習生制度の最大の問題として人権問題があります。具体的には、低賃金や長時間労働といった過酷な労働条件、場合によっては暴力やハラスメントなどの人権侵害の報告がなされています。これらはすべての技能実習生に共通の問題ではないにせよ、一部で深刻な事態が発生していることは間違いありません。
また、この様な事態に陥ってる技能実習生の一部が、逃走し不法滞在となったため、更に過酷な労働条件で働かざるを得なくなったり、犯罪に加担してしまうということも生じています。

4 技能実習生制度廃止の動き

国は、技能実習生制度が抱える問題に対応するため、制度の見直しを進めてきましたが、技能実習生の待遇改善や権利保護はなかなか進んでいません。
そのため、2024年の春に予定されている国会で、技能実習生制度の廃止案が提出される予定になっています。

5 最後に

技能実習生制度は、国内の人材不足を補うとともに、技能実習生の母国への技術移転を図るという点では、今後も維持すべき制度であると思います。しかし、維持するためには、何より技能実習生の人権問題をまず解消する必要があります。
私達の事務所は、労働条件の格差など労働問題について、特に力を入れて取り組んできています。外国人であるということで、技能実習生には大きな労働条件の格差が生じ問題になっていることについても改めて意識し、更に進んだ取り組みをしていきたいと思っています。

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弁護士紹介河西 龍介

河西龍介 弁護士

弁護士登録:2019年

大型書店や不動産鑑定評価・補償コンサルタント会社での勤務を経て、弁護士になりました。自分の経験も活かしながら、皆様の日々の生活が少しでも楽しく豊かなものになるような活動を心がけています。