河西龍介 弁護士記事

2024年5月20日(月)

相続ってしなければならないの?―相続放棄手続

1 相続放棄とは

 亡くなった親の借金は、子が返済しなければならないのでしょうか。この様な場合には、相続放棄という手続きをとることで、返済をしないで済むようにすることができます。
 相続放棄とは、相続発生の際に相続財産となる資産や負債などの権利や義務の一切を引き継がず放棄することです。相続放棄は、ここ30年で7倍近くに増えており、近年急増しているといえます。これは、親の借金等のマイナスの財産を引き継ぎたくないという人達が、相続放棄を選択するようになったためだと考えられます。
 そこで、今回は相続放棄についてお話したいと思います。

2 相続放棄をする際の注意点

⑴ 相続財産の把握

 相続放棄をするかどうかの判断をするためには、故人(被相続人)に負の財産(借金等)があるかどうかを把握しておくことが重要です。故人の財産状況をあらかじめ聞いておくなど、生前から把握するよう心がけておくことをお勧めします。

⑵ 相続放棄の期限

 相続放棄は、原則として、故人の死亡を知った時から3か月以内にしなければなりません(民法915条では「自己のために相続の開始があったことを知った時から」となっています。)。
 例外的に、故人の死亡を知った時から3か月以上経っても相続放棄が認められる場合もあります。例えば、故人に借金があることを故人の死後に知った場合は、相当な理由があると認められれば、借金があることを知った時から3か月以内の相続放棄が認められることがあります。いずれにしても、出来るだけ早く手続きを行ったほうが良いでしょう。

⑶ 相続放棄をする際にやってはいけない事(法定単純承認事由)

 相続放棄をする前に、故人の口座から現金を引き出したり、不動産の名義変更を行ったりすると、故人の財産を相続することを承認したとみなされ、相続放棄ができなくなる場合があります。相続放棄を検討している場合は、これらの行為はしないようにしましょう。

⑷ 家族(次順位の相続人)への通知

 相続には優先順位があります(配偶者は必ず相続人になり、子は第1順位、親は第2順位、兄弟姉妹は第3順位)。そして、法定相続人である第1順位の子が全員相続放棄をすると、相続人は第2順位の親へと移行し、第2順位の親が全員相続放棄をすると、相続人は第3順位の兄弟姉妹へと移行します。
 そのため、相続放棄をする際には、次順位の相続人に相続放棄をすることを伝えておくことが大切です。

3 相続放棄をしても受け取れる財産

 相続放棄は、故人の財産(プラスの財産もマイナスの財産も)の一切を引き継がず放棄するというものです。しかし、以下のように、相続放棄をしても受け取れるものもあります。

⑴ 死亡保険金

 死亡保険は受取人の財産として扱われるため、受け取ることができます。

⑵ 死亡退職金

 退職金規定で受取人に指定されている場合は、受け取ることができます。

⑶ 葬祭費・埋葬料

 故人が国民健康保険や社会保険などに加入していた場合に家族に支給されるものであるため、受け取ることができます。

4 最後に

 相続放棄の手続きは、比較的簡単ですので、これまで述べたことに注意しながらご自身で手続きを行うことも可能です。
 一方で、相続放棄の際には注意すべき点が色々ありますので、ご不明な点がある場合には、弁護士に相談されることをお勧めいたします。

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弁護士紹介河西 龍介

河西龍介 弁護士

弁護士登録:2019年

大型書店や不動産鑑定評価・補償コンサルタント会社での勤務を経て、弁護士になりました。自分の経験も活かしながら、皆様の日々の生活が少しでも楽しく豊かなものになるような活動を心がけています。