家族が行方不明!法的に死亡とみなす制度について~失踪宣告
1 はじめに
配偶者が突然失踪し行方不明になった、認知症の親が行方不明になったなど、家族が行方不明になった場合、行方不明者の財産を処分できず、残された家族が不安定な立場に置かれることがあります。この様な場合には、残された家族の立場を安定させるための失踪宣告(民法第30条)という制度が利用できます。
そこで、今回は失踪宣告についてお話したいと思います。
2 失踪宣告とは
⑴ 失踪宣告の効果
失踪宣告が認められると、行方不明者を死亡したものとみなすことで、行方不明者の相続が発生し、残された家族は行方不明者の財産を自由に処分することが可能となります。失踪宣告などの手続きを経ずに、残された親族が行方不明者の財産を勝手に処分することはできませんのでご注意ください。
⑵ 普通失踪と特別失踪
民法上、失踪宣告が認められるためには生死が7年間明らかでないことが必要とされており(民法第30条1項)、これを「普通失踪」といいます。普通失踪の場合は、行方不明者の生存が最後に確認されたときから7年経過したときに死亡したものとみなされます。例えば、最後に連絡をとれたのが2024年12月頃の場合は、2031年12月頃が死亡日とみなされます。
また、行方不明者が海難事故などの「死亡の原因となる危難に遭遇」し1年間生死が明らかでない場合にも、失踪宣告が認められます(民法第30条2項)。これを「特別失踪」といいます。特別失踪の場合は、期間が経過したときではなく、「危難」が去ったときに死亡したものとみなされます。例えば、2024年12月に乗船していた船が沈没して行方不明となった場合、1年後の2025年12月ではなく、2024年12月が死亡日とみなされます。
3 失踪宣告の手続きの流れ
⑴ 申立
失踪宣告の申立てをできる「利害関係人」とは、「不在者」の配偶者や法定相続人が典型例ですが、遺言書で相続人となっている人や生命保険の受取人になっている人も含みます。
利害関係人は、失踪宣告の申立書(裁判所のHPに書式があります。)、行方不明者の戸籍謄本(全部事項証明書)、行方不明者の戸籍附票、失踪を証する資料(警察の行方不明者届出受理証明書など)、申立人と行方不明者の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))を添えて、家庭裁判所に申し立てます。その際、収入印紙代(800円分)、連絡用の郵便切手代(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)、及び官報公告料(4816円)の費用がかかります。
⑵ 家庭裁判所による調査と公示
家庭裁判所は、申立人から事情を聞くなど調査をし、調査終了後、失踪宣告の申立てがなされている旨を官報や裁判所の掲示板に公示し、一定期間内(普通失踪は3カ月以上、特別失踪は1カ月以上)に、行方不明者や、行方不明者の生存を知っている人に対して申し出るように催告します。
⑶ 審判
公示後、申し出がないまま期間が経過した場合には、家庭裁判所は、失踪宣告の審判を行うこととなります。審判がなされると、家庭裁判所から審判書謄本等が送られてきます。
なお、審判によって失踪宣告が認められても、自動的に行方不明者の戸籍は変更されません。10日以内に、失踪届を、行方不明者の本籍地、又は申立人の住所地である市区町村の役場へ提出する必要があります。
3 最後に
行方不明者が出た場合には、失踪宣告の申立て手続き以外にも、失踪宣告が認められるまでの期間の財産管理なども問題となります。
家族が行方不明となってしまった場合には、警察署への相談とともに、弁護士にもあわせて相談することをお勧めいたします。