毛利倫 弁護士記事

2022年12月12日(月)

裁判にどれくらいの時間がかかるのか

相談者や依頼者の方から「裁判って,どれくらいの時間がかかるのですか」という質問をされることがよくあります。
確かに,事件解決までにかかる時間は重要な問題ですよね。

そこで,今回は,裁判の中でも最も身近な民事裁判,例えば,貸したお金の返還請求や交通事故に遭ったときの損害賠償請求,売買や賃貸借などの契約を巡るトラブルといった通常の民事裁判について,どれくらいの時間がかかるのかについて少しだけご説明いたします。

1 民事裁判に要する時間

全国各地で行われている全ての裁判について,最高裁判所の事務総局が,裁判が起こされた件数や要した時間などを集計し,毎年「司法統計」という報告書にまとめています。今年(令和4年)8月に出された「司法統計」によりますと,昨年(令和3年)中の民事裁判の第一審の平均審理期間は,地方裁判所の全事件では10.5か月,そのうち双方の当事者が最後まで争って判決で終わった事件の場合では14.6か月だということです。

日本では三審制度がとられていて,第一審は地方裁判所か簡易裁判所,第二審は高等裁判所,第三審は最高裁判所で審理されますので,第一審というのは裁判をする場合必ず体験することになる一回目の裁判のことです。

地方裁判所の全事件の審理期間には,相手方が争わずに一回で終わる裁判や,すぐに和解が成立して終わる裁判など2~3か月で終わるものも多数含まれていますが,それを含めたとしても10.5か月かかり,双方の当事者が最後まで争って判決になった事件では14.6か月,約1年3か月を要するのが平均だということです。

私が実際に自分で手がけた事件の感覚からすると,1~2年くらいが平均的な時間ではないかという気がしますので,この統計結果は,弁護士からすれば,まあそんなものかなと思います。でも,一般の方からすると,結構時間がかかるなあという印象かもしれません。
ではどうしてこんなに時間がかかるのでしょうか。

2 民事裁判の主な流れ

民事裁判は,裁判を起こすと,だいたい1~2か月のうちに第1回の裁判期日が開かれ,その後も1~2か月に一度くらいのペースで審理が進んでいきます。
裁判の時に次回の期日を決める際,裁判官から準備期間を尋ねられると,弁護士の中には「通常程度でお願いします」という言い方をする人がよくいますが,この「通常程度」というのは概ね1か月を指しています。

最初の数回の期日は双方の主張と反論を書いた書面や証拠を出し合い,ある程度主張や証拠が出そろい,裁判で争いになっている点が整理された時点で,裁判官から双方に和解の話し合いを勧められることがよくあります。
それでも和解が難しいとなると,当事者や証人などの尋問を実施することになります。
そして,尋問後にも裁判官から和解を打診されることもありますが,やはり和解ができないとなれば,いよいよ判決が言い渡されることになります。
こうした民事裁判の流れをたどると,先ほどの平均審理期間である14.6か月がかかるということになるのです。

3 民事裁判にかかる時間は事件の内容によって全然違う

とはいっても,民事裁判の事件の内容は千差万別であり,一つとして同じ事件はないので,事件の内容によって審理期間は大きく異なります。

先ほどの司法統計によれば,医療過誤の裁判や欠陥建築の裁判など専門的知識を必要とする複雑な内容の事件は特に審理期間が長いようで,こうした事件だけをみると,2年以内に終わった事件は5割程度しかなく,残りの5割の事件は,3~5年か,さらにそれを超える審理期間を要しているそうです。

ちなみに,私の現在手持ちの事件の中で最長のものは,2017(平成29)年10月に提訴された土地の境界線や所有権の範囲を巡る裁判です。第一審は,実に29回の裁判期日を要し,4年1か月後の2021(令和3)年11月に判決が言い渡されましたが,双方が不服として控訴しました。第二審の判決も2022(令和4)年11月に言い渡されましたが,これまた不服として上告し,現在,審理の舞台は,第三審の最高裁判所に移りました。
既に提訴から6年目に突入しており,一体いつ終わることやらと思いつつも,最高裁判所での最終的な勝訴を信じて,日夜,上告審に提出する書面を検討しているところです。

仮に長期間を要する裁判であっても,弁護士は皆様とともに粘り強く闘いますので,何かお困りの方は当事務所に気軽にご相談下さい。

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毛利倫 弁護士

弁護士登録:2006年

弱者救済に取り組む弁護士を目指し、マスコミから転身しました。ともに頑張りましょう!