毛利倫 弁護士記事

2023年10月29日(日)

弁護士費用特約(弁護士特約)をちゃんと利用していますか

1 はじめに

 私は保険会社の回し者ではなく,それどころか,交通事故や医療事件,賃貸借物件でのトラブルなどで,もっぱら被害者側の依頼を受け,加害者側の保険会社を相手方として損害賠償の示談交渉や裁判を数多くやっています。
 その意味からすると,保険会社は,私の敵か味方かどちらだと問われれば,迷わず敵だと答えるでしょう。
 
 しかし,その一方で,私は,その保険会社に弁護士費用を負担してもらい,交通事故の被害者側の代理人として事件処理をすることもしょっちゅうあります。
 今回は,この弁護士費用特約(弁護士特約)についてご説明いたします。

2 弁護士費用特約(弁護士特約)って何?

 保険会社によって,名称は多少異なりますが,弁護士費用特約,あるいは弁護士特約と呼ばれるものは,自動車の任意保険に入る際,オプションとして追加できる特約の一つで,交通事故の被害にあったとき,弁護士に法律相談をしたり,弁護士に損害賠償請求の示談交渉や裁判を依頼したりする費用を保険会社が支払ってくれるものです。
 弁護士業界では,一般的に「弁特」(べんとく)と呼ばれていますので,以下,弁特といいます。

 こうした弁特がなぜ存在するかというと,そもそも交通事故の損害賠償は,弁護士が介入することで,被害者自らが交渉したり,任意保険会社に交渉を任せたりする場合に比べて,賠償額が大幅に増額するケースが極めて多く,交通事故は,弁護士に依頼するメリットがとても大きい事件だからです。

 弁特で保険会社が支払ってくれる弁護士費用は,1事故につき,相談だけの場合は最大10万円まで,示談交渉や裁判を依頼する場合は最大300万円までですので,損害賠償額が1500~1600万円程度に達する相当大きな交通事故のケースまでは,弁護士費用を自己負担することなく弁護士に依頼することが可能になります。

 一方,弁特に加入する保険料の負担額は,年額数千円程度です。
 しかも,弁特を利用しても,翌年の保険料や保険の等級には一切影響はないので,保険の等級が下がる心配もありません。

 弁特が,どのくらい普及しているのかわかりませんが,たまたま私が契約している任意保険会社のホームページによれば,2022年3月末時点で57.5パーセントが弁特をつけているということですので,弁特に加入している人の方が多数だと思います。

3 弁護士費用特約(弁護士特約)のメリットが特に大きい場合

 ①被害が小さい交通事故の場合
 弁特は,被害額が高額となる損害賠償請求事件でも大いに助かりますが,より威力を発揮するのは,被害が小さい交通事故の場合です。
 たとえば,数万円の修理費の物損事故や,軽いケガの人身事故で賠償額が10~20万円程度の場合,弁護士に依頼することでかえって費用の方が賠償額を上回る「費用倒れ」になるおそれがあり,こうした事案では,費用的にマイナスになることを避けて,そもそも弁護士に依頼すること自体通常考えられません。
 ところが,弁得に加入していると,そうした費用倒れの心配を一切することなく,気兼ねなく弁護士に依頼して,示談交渉や裁判をすることができます。
 実際に私も,10万円前後の被害しかない交通事故の裁判を,弁特を利用することによって,何件も手がけたことがあります。

②被害者の過失がゼロの場合(もらい事故の場合)
 また,賠償額の大小にかかわらず,被害者側の過失がゼロで,相手方が100パーセント責任を負う完全な被害事故の場合(停止中の追突事故など),任意保険会社は,被害者にかわって示談交渉をすることができません。
 そのため,自分自身で交渉をするか,弁護士に交渉を依頼するしか選択肢がないのですが,この場合,弁特に加入していれば,費用の心配をすることなく弁護士に依頼することができ,交渉の手間や労力を負担せずに賠償額を増額させる結果が得られる可能性が高まります。

4 弁特は積極的に活用を!

 弁特に加入している人が万が一交通事故の被害にあった場合,すぐに弁特を利用して弁護士に依頼しない手はないというのが私の結論ですが,実際には,弁特に加入しているのに,弁特を利用しない人が極めて多いといわれています。
 10年以上前のデータではありますが,弁特利用者は,弁特に加入している人の1パーセントにも満たないという調査報告もあるようです。
 その原因としては,自動車の任意保険の契約には多数の特約がオプションとして付いているため,弁特に加入したという認識自体がないか,あるいは,弁特に加入している認識があったとしても,実際にはどういう場面でどうやって利用するものなのかよくわからないということがあるのではないでしょうか。
 当事務所に交通事故の被害の相談に来られる人の多くが弁特のことを知らず,保険会社に確認するよう弁護士に指摘され,問い合わせの結果初めて弁特がついていることがわかったというケースはよくあります。

 また,保険会社や個別の契約内容によっても違いますが,弁特が利用できる範囲は,一般に契約者本人だけでなく,同居の家族や別居の未婚の子,契約車の同乗者も含まれますし,契約車に乗っていたときの交通事故でなくとも,歩行中の交通事故や,さらには車が関係しない日常生活での事故の被害でも弁特が使える契約もありますので,交通事故に限らず,事故の被害にあった場合には,念のため,保険会社に契約内容の確認をすることをぜひお勧めいたします。

 事故の被害にあわないことが一番ですが,もし事故の被害にあった場合には,まずは当事務所に気軽にご相談ください。

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毛利倫 弁護士

弁護士登録:2006年

弱者救済に取り組む弁護士を目指し、マスコミから転身しました。ともに頑張りましょう!