優生保護法救済法に関する弁護団声明
國府です。
私も一員となっている全国優生保護法被害弁護団から、被害救済法に関する弁護団声明です。
弁護団声明
本年9月6日、厚生労働省による「都道府県における旧優生保護法関係資料等の保管状況調査結果」が公表された。調査結果によれば、約2万5000件の被害者のうち個人が特定できる件数は3033件にすぎず、記録のない被害者が2万人以上に及んでいる。
被害救済が長く放置された結果がこの数字に現れているものというべく、このような中で検討されるべき救済制度は、「放置」による不利益を被害者に負わせるものであってはならない。
当弁護団は、このような視点に立ち、被害者の救済制度の制度設計に関し、少なくとも以下の3点について、十分な検討・配慮を求めるものである。
1 救済対象者の範囲について
子宮摘出などの法の規定を逸脱した手術や法所定の審査手続を経ない手術も加えて広く救済対象とされるべきであることはもちろんとして、具体的な被害事案が現在想定されているものだけに限られないこと、明確な記録がないため証明が困難なものも多数あるものと予想されることから、多様な被害事案、被害の実態を十分調査し、救済されるべき被害者を排除しないような制度設計を行うよう求める。
なお、配偶者や相続人についても救済対象者から一律に除外するべきではなく、被害者や被害者関係団体などの意見を聞いた上で検討がなされるべきである。
2 認定機関・認定方法について
認定機関・認定方法については今後十分な議論検討が必要であるが、有識者等による第三者機関による場合であっても、行政からの独立性が高い機関として設置され(例として原子力損害賠償紛争解決センター)、記録がないケースが多数あることを前提に、被害者の立場に立って柔軟に認定ができるような委員構成及び認定基準とされるべきである。また、第三者機関の認定については、国はこれに拘束され、被害者側のみに異議申立権(裁判で争う権利等)を付与する制度設計とすべきである。
認定手続、認定の基本方針や認定基準については、年金記録確認の第三者委員会の例が一つの参考になるものと考える。
3 行政保有情報に基づく被害者への通知について
本件被害の特性からして、救済制度の広報のみによって、被害者側からの被害申告がなされることを期待することは難しく、救済制度が絵に描いた餅となりかねない。
救済を実効的なものとするためには、自治体に保管されている記録などで特定されている被害者に対する告知・通知等が行われるべきである。
また、記録のない被害者が2万人以上に及んでいることからすると、被害者と特定された者に対する通知のみでは不十分であることも明らかである。一方で、通知等においてはプライバシー保護にも配慮が必要である。そこで、例えば、特定されている者を含め、それ以外にも被害者となった可能性のある者(一定の年齢層の障害のある者、入所者に手術が実施された可能性のある施設の(元)入所者等)に対し、救済制度を通知(告知)するなどの方法が考えられる。対象となりうる者へ広く通知を行った例として、消えた年金記録に関する通知、アスベスト被害の賠償金支払に関する通知が参考になる。
本件においては、被害者に対する救済制度の個別通知の制度が是非とも必要であり、通知等の方法については、今後、被害者や被害者関係団体などの意見を十分聞いた上で制度設計を行うよう求めるものである。
2018年9月28日
全国優生保護法被害弁護団
共同代表 新 里 宏 二
同 西 村 武 彦