國府朋江 弁護士記事

2023年4月17日(月)

高速有料道路における障害者割引制度が自家用車以外にも適用されるようになりました

本年3月27日から、有料の高速道路の料金に関する障害者割引制度が改善されています。

道路の管理運営を行う会社によると「有料道路における障害者割引は、通勤、通学、通院等の日常生活において、有料道路をご利用される障害者の方の自立と社会経済活動への参加を支援するため、全国の有料道路事業者において統一的に実施しています。
これまで事前登録された自家用車に限り本割引を適用しておりましたが、自家用車をお持ちでない方が知人の車やレンタカーを利用する場合や、介護が必要な重度の障害者の方がタクシーを利用する場合など、事前登録がない自動車でも新たに割引の適用となります。なお、自動車の事前登録の有無にかかわらず、事前に本割引の申請手続きが必要です。

あわせて、これまで市区町村の福祉事務所等の協力のもと行っていた事前登録手続きについて、自家用車を事前登録のうえETCを利用申請される方を対象に、窓口に出向くことなく申請ができるよう、新たにオンライン申請を導入します。」(ネクスコ東日本HPより)とのことです。

改善された点は①自家用車以外でも割引されるようになったこと②事前登録がオンライン申請できるようになったことです。

一点目について、これまでは、事前に登録された自家用車に限って割引を受けられていたのですが、これでは、例えば旅先でレンタカーを利用する際や、他の人の車に乗せてもらう場合には、車に乗って移動する必要性は変わらないのに、割引を受けられないという不都合がありました。今回の制度見直しによって、割引対象の車が増え、使いやすい制度になったことは間違いないでしょう。

二点目について、障害のある人にとって、行政窓口に行くこと自体、そう簡単ではない場合が多いことを考えると(出かける準備が大変、ヘルパーさんやタクシーの手配が必要な場合もあります。)、オンラインで様々なことが行えるようになることは、他の制度についてもどんどん進めていただきたいと思います。

一方で、この制度にはそもそもの欠陥があります。割引制度を使うことができるのは、身体障害者手帳をもつ身体障害のある人か、療育手帳をもつ知的障害のある人に限定されているということです。「手帳」取得を要件としていることと、精神障害のある人を除外していることで、二重に問題があります。

手帳についていうと、例えば、身体障害者手帳は、

① 視覚障害

② 聴覚又は平衡機能の障害

③ 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害

④ 肢体不自由

⑤ 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害

⑥ ぼうこう又は直腸の機能の障害

⑦ 小腸の機能の障害

⑧ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害

⑨ 肝臓の機能の障害

という一定の種類の障害であって、かつ、一定以上の程度、永続することが必要になります。等級表というものが定められていて、等級表の記載に該当しなければ、いくら自分で歩くのが困難でも手帳は交付されません。

例えば、難病で、歩くのが難しい状態になっている人がいるとします。数歩は自力で歩くことができる程度とします。しかし、そういう人は、等級表の要件に該当しなければ、身体障害者手帳を取得することができません。ついでに言うと、難病の中でも、「指定難病」に指定されていなければ、障害者総合支援法という法律に基づく福祉サービスを受けることができず、何の助けも得られない制度の谷間に落ち込みます。

歩くことができないから、車で移動しなければならないということに違いはありませんが、「手帳」を要件とすると、とっても不平等が生じます。

精神障害のある人は、その人によりますが、公共交通機関で多くの人がいる乗り物で移動することがつらい場合があります。こういう場合も、車で移動する必要性があるのですが、この制度では割引を受けることはできません。

さて、障害のある人だけ割引があるというのはずるい、と思う方はいるでしょうか?

移動して自分の好きな場所に行ける、これは人間にとってとても大切なことです。福岡は、バスが発達していて、障害のない人であれば、バスや鉄道を使えば、いろんな場所に便利に行くことができます。例えばあなたが家から出ることができずに、家の中だけで過ごすことしかできなかったとしたらと想像してみてください。めちゃくちゃつらいですよね。障害のある人にとって、移動というのはそんなに簡単なことではありません。加えて、障害のある人の収入は、統計上、障害のない人と比べて低くなっています。割引を設けなければ、お金がかかる移動を躊躇することもあるでしょう。

少しでも当たり前の生活をできるように、障害のない人を前提としてつくられた社会の制度を少しでも障害のある人に使いやすいようにしていく取り組みがこういった割引制度等です。

今後、制度として、手帳や障害種別を要件とするのではなく、「車で移動しないと移動が難しい」というところに着目して割引が適用されるようになってほしいと思います。

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弁護士紹介國府 朋江

國府朋江 弁護士

弁護士登録:2012年

京都出身で、福岡には全く地縁はありませんが、福岡の魅力に惹かれてやってきました。
自分は弁護士に関わり合いになることはない・・・そう思われる方が大半だと思います。
しかし、労働、離婚、相続、交通事故、近隣問題といった様々な分野で、自分が望むと望まざるとにかかわらず、紛争の当事者となってしまうことはたくさんあります。
争いごとに巻き込まれると、それだけでとても精神的にも肉体的にも大きな負担がかかることになります。
そのため、私は、ご依頼者の気持ちに寄り添ってお話を聞くことに力を入れています。また、どのようにすれば最もご本人にとっての利益になるのか、法的側面から検討するとともに、ご本人の負担を軽減し、次のステップへと進んでいただけるようにしたいという思いから、ご提案をさせていただいています。