梶原恒夫 弁護士記事

2024年6月23日(日)

福岡第一法律事務所は色々な労働事件に取り組んでいます!! 最近のとりくみと成果のご紹介

労働者の個人の尊厳を守るために

わたしたち福岡第一法律事務所は、権利を侵害された労働者と共に、その権利を回復するために所員一同、全力で取り組んでいます。以下、最近のいくつかの取り組みとその成果をご紹介させていただきます。

福岡第一法律事務所の労働事件への取り組みの特徴

 その前に、まずは私たち福岡第一法律事務所の労働事件への取り組みにおける特徴を少しだけ述べさせてください。
 私が35年前に弁護士の仕事を始めた当時は、労働事件に取り組む法律事務所は余り多くありませんでした。とりわけ、労働者側の代理人になる弁護士はとても少なかったという印象があります。しかし、その後、正規・非正規間の格差の拡大、職場におけるハラスメントの増大、多発する残業代未払問題、メンタル不全による過労自殺の増加など、職場における法律問題が複雑・多岐に亘って生じる状況となって労働事件の需要が増え、他方弁護士人口も増加したこと等を反映して、現在ではたいへん多くの法律事務所が労働者側の労働事件を取り扱うようになっています。
 このような中、私たち福岡第一法律事務所の労働事件への取り組みの特徴としては、その事件の必要に応じて、労働組合の人々と一緒に労働者の権利擁護・事件解決に向けて取り組むという点を挙げることができると思います。私の経験からすると、「労働組合」というと、何か強い抵抗を感じて、(残念ながら)拒否感を覚える人も多くおられるものと推察しますが、しかし労働者の目線に立って労働者の権利を守る立場で活動する労働組合の存在価値は絶大です。例えば、職場におけるハラスメントで精神疾患を発症して一定期間休職した後に復職を目指すケース等においては、安心して職場に戻れるよう使用者にそもそも発症の原因となった職場環境を改善させる必要がありますが、そのようなとき団体交渉を通じて使用者に必要な措置を講じさせる等、労働組合の果たす機能ないし役割はとても大きいのです。「私の会社には労働組合はない」、あるいは「組合はあるけど御用組合で何の力にもなってくれない」という方もおられると思いますが、私たち福岡第一法律事務所では、日ごろから付き合いのある信頼できる労働組合をご紹介することもできますし、その中には、一人でも個人加盟できる組合もありますので、職場の問題で苦しんでおられる方がおられたら、是非、当事務所にご相談ください。
 ということで前置きが長くなりましたが、以下、福岡第一法律事務所における最近の取り組みやいくつかの成果をご紹介します。

突然の不当配転に対する配転命令無効確認裁判における勝利

 1つ目は、不当配転とのたたかいです。一般に、使用者には人事権について広い裁量があるとされており、配転命令の無効を争うことは大変難しいと言われています。しかし、最高裁の判例においては「当該転勤命令につき業務上の必要性が存在しない場合または存する場合であっても,当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものである時もしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情の存する場合」には当該転勤命令は権利の濫用として許されないとされており(東亜ペイント事件)、労働者としてはどんな酷い配転命令にも従わなければならないというわけではありません。
 私たちが取り組んだ事件は、北九州のある私立高校に20年以上にわたって勤務してきた先生が、不当解雇により学校から排除され、裁判において解雇が無効であることが確定して学校に復帰すべき状況になったにもかかわらず、その後も約9か月間にわたり学校に復帰させてもらえず、学校の敷地内への立ち入りすら禁じられた状態が継続した中で、突然、福島にある系列校への配転を命じられたという酷い事案です。この配転命令がこの先生を排除するという不当な動機・目的をもってなされたものであることは明白であり、そのことを訴えて裁判をたたかいました。その結果、昨年9月、この配転命令は使用者の権利の濫用であり無効であるとの判決を勝ち取り、今年3月の控訴審においても、学園側の控訴を棄却するという勝訴判決を得ることができました。
 この事件については、労働組合が全面的に支援をしており、配転無効確認訴訟のほかに、この先生を教壇に復職させないことは組合員を理由に差別するものであるとして、福岡県労働委員会に不当労働行為救済申立ても行っています。なお、不当労働行為救済制度については、また別の機会にお話させていただこうと思っています。

解雇無効の判決により、「現職復帰」を実現!!

 2つ目は、タンクローリーの運転手さんの不当解雇事件です。この事件では、解雇無効確認訴訟を提起し、比較的短期間のうちに、「原職復帰」をすることができました。
 この事案は、会社が、社長の気に入らない運転手さんに対し、何年も前に起こしたスピード違反や作業マニュアルの手順の一部を遵守しなかったこと等を理由に、突然解雇してきた事案でした。この運転手さんとその労働組合はこのような不当解雇は絶対に許さないとして裁判をたたかい、本人に反省や改善の機会も与えずに突然解雇をしたのは解雇権の濫用であるとの私たちの主張を全面的に認める勝訴判決を得て、見事に現職復帰を果たしました。
 なお、一旦解雇されたら職場復帰することは難しいと思っておられる人も多いと思いますが、そのようなことはありません。適切な訴訟活動を行い、そして労働組合の支援を得られれば、不当解雇を撤回させ元の職場に戻ることは十分に可能です。もし、不当な解雇を受けた方がおられたら是非、当事務所にご相談ください。 

労働審判によるスピード解決

 3つ目は、自治体のアウトソーシングを受けて福祉事業を行う会社の社員の方への不当解雇事案です。1年契約で勤務し始めた矢先、何ら合理的理由も示さず突然解雇してきたもので、こんな解雇は許せないと直ちに労働審判を申立てました。1回目の審判の期日で、会社が解雇を撤回した上、残りの契約期間中の賃金全額にほぼ近い金額を支払うという調停を成立させました。
 この事件は、不当な扱いを受けた労働者が、泣き寝入りすることなく裁判手続きを通じて適切に権利行使をすれば、相当程度に被害回復を図ることができるということを実証した事案であるということができます。ちなみに、この事件では労働組合の支援はありませんでした。

偽装請負契約を打破し、「労働者性」を認めさせる裁判を提起

 「雇用によらない働き方」の問題点については、以前「あなたは「労働者」? それとも「個人事業主」?」というテーマでこのコーナーに書いたことがありますが、この5月、偽装請負契約を打破して「労働者性」を認めさせるために、次の事案について未払残業代請求及び雇い止め無効確認を求めて福岡地裁久留米支部に訴訟を提起しました。
 この事件は、「経営パートナー契約」と銘打って業務請負契約の外形を取りながら、その実体は、会社の業務命令に従わせるという厳格な指揮命令の下に置き、ラーメン店における過酷な深夜労働に従事させてきたという事案です。会社側は、これは労働契約ではないとして「労働者性」を否定し、これまで一度も時間外割増賃金や深夜割増賃金を支払ったことがありません。その上、労働者側が労働契約法18条に基づき無期転換権を行使したにもかかわらず、これを無視して契約を一方的に解除してきたのでした。こんなことは絶対に許せないということで、上記の提訴に踏み切ったのです。なお、この事件についても、この提訴に先立ち、会社が労働者性を否定して労働組合との団体交渉に応じないという態度であるため、福岡県労働委員会に不当労働行為救済申立てをおこなってこちらもたたかっています。
 この事件に限らず、実態としては「労働者」として働きながら、本来受けられるべき保護を受けられず無権利状態に置かれている人々が、現在数多く存在しています。これは正義に反します。本来「労働者」である者を非労働者として扱うことは、労働基準法に定めた最低限の労働条件の実現を妨げ、団体権・団体交渉権・団体行動権という労働基本権を侵害するものとして、それ自体が重大な人権侵害です。私たち福岡第一法律事務所は、「雇用によらない働き方」が孕むこのような深刻な問題の抜本的解決に向けて、今後も労働組合の人々と協力して積極的に取り組んでいきます。

未払残業代の支払を求めて87名の労働者の集団提訴

 私たち福岡第一法律事務所は、未払残業代問題についても積極的に取り組んできました。そのような中、今年3月には、市内大手タクシー会社の社員87名からの依頼を受けて未払残業代の支払いを求める集団提訴を行い、先日、その第1回口頭弁論期日が開催されました。その期日においては、原告を代表して当該組合の執行委員長の方が裁判官に対して口頭意見陳述を行い、「今日、タクシー乗務員の不足やタクシー労働者の高齢化が大きな問題になっていますが、長時間労働、休憩時間の不足、深夜残業時間の多さ、低賃金、残業代未払いなどの過酷かつ低賃金の業界に人材が集まらないのは当然のことです。タクシー不足の問題は最終的には市民の皆様に皺寄せされることになります。自分たちタクシー労働者は、市民の皆様が、いつでもどこへでも安心して移動できる生活を守るためにも、タクシー業界全体が当たり前の人権感覚に基づいて、タクシー労働者に対してその労働に見合った対価を払うことでタクシー労働者を守る努力をするべきであることを明らかにするためにこの訴訟を提起しました。」との陳述を力強く行いました。
 私は、現在、タクシー労働者及びトラック労働者などの未払残業訴訟を上記のほかにも複数担当しており、今も同僚弁護士と一緒にあるタクシー会社における未払残業代について、上記の訴訟同様、集団請求訴訟を準備中です。やはりタクシー事業やトラックなどの運送事業においては、労働者の犠牲の下で会社運営が行われている実態が多く存在しているようです。
 未払残業を適正に支払わせていくことは、長時間労働を是正しその会社の労働環境の改善にも直結することです。もし未払残業代や長時間労働の問題で苦しんでいる方がおられたら、是非、私たち福岡第一法律事務所にご相談ください。

今後も、働く人々と一緒にたたかいつづけます

 以上、最近の主なとりくみといくつかの成果について述べさせていただきましたが、わたしたち福岡第一法律事務所は、労働者の権利を守り、またその充実化をめざして今後もたたかい続けます。職場における法律問題で悩まれるようなことがあれば、まずは私たち福岡第一法律事務所にお気軽にお越しください。

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弁護士紹介梶原 恒夫

梶原恒夫 弁護士

弁護士登録:1989年

主要な取組分野・フィールドは,「労働」をキーワードとする各種事件です。また,業務に関連して関心のある領域は,法哲学,社会思想,社会哲学です。常に勤労市民と一緒に活動していける弁護士でありたいと願っています。個別事件を普遍的な問題につなげながら。