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活動紹介障害問題

2015年2月9日(月)

【速報】電動車いす訴訟で完全勝訴!

福岡障害問題弁護団

この事件は、心臓機能障害があり、連続歩行は100m~200mが限界である原告が自力の活動範囲を広げるために補装具(電動車椅子)費の申請をしたところ、地方自治体(福岡県筑後市)から申請を却下されたため、自治体を相手取り、提訴したものです。

2015年2月9日午前10時に福岡地方裁判所で判決の言い渡しがあり、補装具費却下決定の取り消し及び義務づけが認容されました。

以下は弁護団声明です。

補装具(電動車いす)費支給申請却下処分の取消等を求める小林訴訟福岡地裁判決を受けての弁護団声明

2015年2月9日

小林訴訟弁護団  弁護士 久保井 摂  弁護士 中村 博則  弁護士 紫藤 拓也  弁護士 星野  圭  弁護士 緒方 枝里  弁護士 國府 朋江  弁護士 上野 直生  弁護士 澤  雅人

1 はじめに

本日、福岡地方裁判所第2民事部は、生まれつき単心房単心室、肺動脈閉鎖という重い心臓機能障害をもち、独力では50メートル程度の歩行しかできない小林奈緒さんの補装具(電動車いす)費支給申請に対し「日常生活活動が著しく制限されているとは考えにくく生活、社会活動状況から…電動車いすの対象とは認められない」として却下した筑後市の処分は裁量権を逸脱濫用するものとして違法であるとして取り消すとともに、補装具費の支給を義務付ける画期的な判決を言い渡しました。

2 判決の評価

本判決は電動車椅子に係る補装具費の支給決定を義務づけたおそらく全国初の判決です。

判決は、障害者自立支援法76条1項につき市町村の合理的裁量を認めながらも、その裁量は無制限ではなく、障害の有無にかかわらず全ての国民が基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるとの理念にのっとり、障害者の自立及び社会参加の支援を目的に掲げる障害者基本法や障害者自立支援法の趣旨目的に反しない限りにおいて妥当するとしました。

その上で、当該申請に係る障害者の身体の状態、年齢、職業、学校教育、生活環境等の諸条件その他の具体的な事情を適切に調査せず、あるいは適切に考慮しないことは障害者自立支援法の趣旨目的に反し、裁量権の逸脱濫用となるとしました。

本件において、連続して5分最長200メートルの歩行能力をもって歩行に著しい制限はきたしてはいないとした本件処分は、具体的な歩行状況や、自宅周囲の施設の状況、原告が希望する活動等を正確に把握しておらず障害者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう必要な給付その他の支援を掲げる障害者自立支援法の趣旨目的に反し、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであるとして取り消すとともに、補装具費の支給決定を命じました。

本判決は障害当事者の障害特性や生活実態を十分に調査する必要性を認めたという点で高く評価できるものです。

 

3 筑後市及び更生相談所に対し求めること

筑後市及び更生相談所に対しては、本判決に対し控訴せず、直ちに本判決の趣旨に従った処分を行うことを求めます。

また、今後障害福祉サービスの支給決定にあたっては、我が国が障害者の権利に関する条約を批准したことを重く捉え、形式的な点を重視するのではなく、個々人の障害特性及び生活実態に応じ、障害当事者が社会の一員として社会参加を果たすことができるような制度運用を行い、行政が障害当事者にとっての障壁とならないよう、強く求めます。

以上

 

弁護団では、本日、福岡県障害者更生相談所及び筑後市に対し、本判決に対し控訴しないこと及び本判決の趣旨に従い、速やかに補装具費の支給決定をすることを要請しに行きました。

判決は、補装具費支給決定にあたり、市町村に裁量があることを前提とし、補装具費支給の要否を判断するに当たり考慮すべき事情は、第一に障害者の身体の状態というべきであるが、障害者基本法及び障害者自立支援法の趣旨目的に照らせば、当該身体の状態により当該障害者が日常生活又は社会生活を自立して営むことがどれ程困難となっているかといった観点から、当該障害者の生活状況等についても考慮すべきであるとしています。

また、支給決定についての事務取扱要領においては身体障害者及び身体障害児の身体の状況、年齢、職業、学校教育、生活環境等の諸条件を考慮し、その是非を判断することと定められているところ、これらの考慮事項は障害者自立支援法の趣旨目的に反しない限りにおいて妥当するとしています。

判決が障害者の自立及び社会参加という観点から行政の裁量を狭く解釈したという点は、日本が障害者権利条約を批准したことにも沿う内容であり、とても評価できるものであると思います。

原告は、提訴から2年以上経過し、ようやく素晴らしい判決を得ることができました。

かけがえのない2年間を電動車椅子なしに過ごしたという事実は消えませんが、判決が確定しすみやかに補装具費が支給されれば、一人の成人女性として社会に出て人生をより豊かなものにすることができると確信します。

筑後市が控訴せず早期に原告が電動車椅子を手に入れることができることを心より願います。

(文責 弁護士 國府 朋江)

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