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活動紹介原発:原発なくそう!九州玄海訴訟

2013年2月4日(月)

九電値上げ問題公聴会での意見陳述

弁護士:毛利 倫

先日(1月31日)に行われた九州電力の値上げ問題に関する公聴会にて意見陳述をしました。
下記に載せていますのでぜひお読みください。

九電値上げ問題公聴会意見陳述

20130131 弁護士 毛利  倫

弁護士:毛利倫

第1 はじめに

私は、弁護士です。回復不能な未曾有の被害を発生させた福島第一原発の事故により、わが国における原発の安全神話は崩壊し、原発の危険性はもはや誰の目にも明らかになりました。

私たちは、福島の原発事故を経験し、この国からすべての原発をなくしたいとの思いで、100名を超す弁護士が結集し、九州電力と国に対して、玄海原子力発電所の操業差し止めを求める裁判をしています。

この「原発なくそう!九州玄海訴訟」は、ちょうど一年前のきょう、佐賀地方裁判所に提訴しました。
昨年12月の第5次追加提訴までの原告数は5493人。

原告は47都道府県すべてに存在し、原発訴訟としては全国最大規模の集団訴訟です。

この裁判以降、原発の廃止を求める大規模裁判は、全国各地で相次いで起こされていて、原発のない社会の実現こそが多数の国民の願いです。

私は、「原発なくそう!九州玄海訴訟」弁護団の一人として、今回の九州電力の電気料金値上げ申請の問題点を指摘し、今回の値上げ申請が認められてはならないという立場で意見を述べたいと思います。


第2 原発依存の誤った企業経営の責任を曖昧にし、そのツケを国民に転嫁するな

そもそも九州電力は、今回、なぜ電気料金を値上げするのでしょうか。

九州電力が説明する値上げの申請理由はこうです。

いわく、「保有する原発6基すべてを停止した結果、火力発電所の稼働を増やし、他社からの電力購入を増やしたため、燃料費や購入電力料が大幅に増加した。それにより財務状況が急速に悪化し、このままでは会社がつぶれてしまう。電気料金を値上げして赤字を穴埋めし、会社を存続させて欲しい」。

すなわち、九州電力が値上げ申請をしたのは、保有する原発がすべて運転を停止した結果、会社が経営破綻の危機に陥りそうだというのです。

しかし、すべての原発がわずか一年程度停止しただけで、どうして経営危機になるのでしょうか。

その根本的原因は、取りも直さず、九州電力が、電力供給を原発に大きく依存してきた企業経営の誤りにあります。

九州電力は、安全性はもとより、電力供給の安定性や、経済効率性などを強調して、原子力発電を大きく推進してきました。 
福島第一原発事故が起きるまで、九州電力の発電電力量に占める原子力発電の比率は、約40パーセントと高い比率となっています。
その原発依存率の高さゆえに、原発の稼働をすべて停止した場合、火力発電など他の電源により発電を補う必要が生じ、確かに燃料費等のコストが一定程度は増加するでしょう。

しかし、それだけでは、財務状況がこれほど悪化し経営破綻の危機を回避すべく料金値上げをせざるを得ない説明にはなっていません。
九州電力の財務状況が悪化する真の原因は、原発にあります。

原発は停止中と言いながら、九州電力は、莫大な維持管理費を投じて、いつでも原発を再稼働できるように備えるため、燃料を冷却するための多数の機器の運転を現在も続けており、毎日作業員が数回パトロールをして、機器の監視や点検などを行っています。
こうした停止中の原発の維持管理費に加え、これまで巨費を投じてきた原発建設にかかる借入金、使用済み燃料の再処理や放射性廃棄物の処分等にかかるバックエンド費用、福島第一原発事故の賠償負担金、福島の事故を受けて実施される原発の追加安全対策費など、原発にかかる莫大なコストが九州電力の経営を圧迫しています。

九州電力は、わずかな電気も生み出さない原発にかかるこうした莫大なコスト負担を、電気料金値上げという形で、原発に反対する多くの利用者に押しつけようとしているのです。

まさに、原発に依存してきた企業経営の誤りのツケを国民に転嫁しているとしか言いようがありません。
九州電力は、今回の値上げ問題を審査する国の電気料金審査専門委員会においても、原発に関する重要な情報を小出しにし、原発に関する正確な情報を明らかにすることに消極的な姿勢が見られ、私には、値上げの原因と原発との関連性を少なく見せようとする意図があるのではと感じられます。

今回の福島第一原発の事故とその後日本の全ての原発の稼働停止で明らかになったように、電力供給の安定性に適するとされた原発は、皮肉にも、電力供給の安定性に最も欠ける電源であることが露呈しました。
そしてひとたび過酷事故が起きれば、地域社会は崩壊し、もはや回復不能な損害を生じさせることも経験的に明らかです。
福島第一原発は、事故から2年近く経つ現在も放射性物質を放出し続け、収束の目処は全く立っておらず、いまだ事故原因の解明すら行われていないのが現状です。

電気料金の値上げを申請する前に、そのような原発を、最も優れた発電として電源の中心に位置付け推進してきた九州電力の企業経営のあり方自体が、まずは厳しく問われるべきです。

ところが、九州電力は、福島第一原発の事故や、原発を推進してきた電力会社としての経営責任について何の総括もしないまま、引き続き原子力を中心とする電源のベストミックスを追求するとして、あろうことか、福島第一原発の事故を経験した今でさえ、川内原発3号機の増設を計画し、原発による発電比率を50パーセントにまで引き上げることを経営目標にしているのです。
安全性や電力供給の安定性、経済効率性など原発に関する虚偽の情報で利用者を欺き、危険極まりない原発に電力供給を大きく依存してきた自らの経営責任を曖昧にしたまま、原発が稼働停止になり経営が悪化するやいなや、そのツケを利用者に押しつけ電気料金値上げを申請するという九州電力のやり方は、決して許されるべきではありません。

皆さんもおわかりのように、原発がゼロでも電気が十分足りることは、昨年夏と今年の冬ですでに実証されました。原発はそもそも必要性がないのです。

今回の電気料金値上げの真の原因は、原発事故の反省や総括をすることなく、電源として全く不要な原発の維持存続にしがみつき、莫大なコストを垂れ流している九州電力の経営の誤りそのものにあります。

これが、今回の値上げが認められるべきではない一番の理由です。

なお、原発依存の企業経営が値上げに直結していることは、電力各社の値上げ申請状況からも明らかです。
すなわち、原発の発電比率が51パーセントと最も原発依存度が高い関西電力がすでに電気料金値上げを申請し、やはり原発依存の高い北海道電力、四国電力などが値上げを検討していると報道されています。

その一方で、原発ゼロの沖縄電力はもちろん、原発依存の低い中部電力や、中国電力、北陸電力は、値上げ申請をしない方針で、まさに原発依存度で電力各社は明暗を分けたと言えます。

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