とんでもない検察官勤務延長問題に反対しましょう!
弁護士:毛利 倫
弁護士の毛利です。
新型コロナウイルスの感染拡大が大変な状況になっており,
皆様もどうぞご自愛下さい。
ところで,この新型コロナウイルスの問題に
国民の圧倒的関心が集中する中,
政府(安倍政権)は,検察官の勤務延長について,
次々に極めて問題のある政策を進めていることをご存じですか。
今年1月31日,政府は,
定年退官する予定だった東京高等検察庁検事長について,
国家公務員法(以下「国公法」)第81条の3第1項を適用し,
半年間勤務を延長することを閣議決定しました。
しかし,準司法官として司法権の一翼を担い,
公益の代表者として刑事手続を行い公訴権を独占するなど
強力な権限を有する検察官には,
他の国家公務員と異なる裁判官に準じた身分保障が与えられ,
定年制度についても,特例として,
検察庁法第22条(定年を63歳とする)
に定められた運用がなされてきました。
同条は,国公法の定年制度の特別法であり,
一般法である国公法上の定年制度や
これを前提とする勤務延長が検察官に適用される余地はありません。
今回の閣議決定は,国公法及び検察庁法の関係条文の文言,
その制定・改正の経緯及びこれまでの運用を無視している
違法・無効なものであり,
政府によるかかる恣意的な法解釈は,
わが国の民主主義や法治国家としてのあり方の根幹を揺るがすものです。
そもそも,検察官の勤務延長を政府の判断で可能とすること自体,
政府による検察官の人事への介入を招きやすく,
検察官の職務の政治的中立性と独立性が損なわれる恐れがあります。
ところが,このような状況下で政府は,
2020年(令和2年)年3月13日,
あえて検察官の勤務延長制度を導入する
国公法及び検察庁法改正案を国会に提出しました。
その内容は,
検事長ら役職者の勤務延長を内閣・法務大臣の判断に委ねるものです。
この改正案も,今回の閣議決定と同様,
検察官の政治的中立性と独立性を脅かし,
さらに政府が恒常的に検察官人事に介入できる仕組みを
制度化するに等しいものであって、到底,認められないものです。
そこで,私たち弁護士有志は,
基本的人権と社会正義の実現を使命とする法律家として,
違法な本件勤務延長の閣議決定の撤回を求めるとともに、
国公法等の一部を改正する法律案中の
検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分に
強く反対するため,
「検事長勤務延長閣議決定の撤回を求め,
検察官の勤務延長制度導入に反対する弁護士共同アピール」
を出しました。
当事務所の弁護士も全員賛同しており,
現時点(4月30日)で,
全国で日弁連の役職経験者を中心に120人が呼びかけ人に名を連ね,
約1000人の弁護士が賛同しており,
合計で1100人以上の弁護士が賛同しております。
(なお、5月13日時点での賛同者は2400人を超えました)
さらに,福岡県弁護士会も,この問題に関し,
以下の二つの会長声明を出し,問題性を明らかにしております。
*2020.03.27*
検察官の定年後に勤務を延長する旨の閣議決定の撤回を求める会長声明
*2020.04.24*
検察庁法の改正の一部に反対する会長声明
これだけでなく,安倍政権は,
新型コロナウイルス感染拡大を防止するために必要だとして,
この機に乗じて,憲法を改正し,
大規模災害時に内閣の権限を強め、個人の権利を制限できる
緊急事態条項を新設する案を検討することをもくろんでおり,
まさに火事場泥棒としか言いようのないひどい有り様です。
新型コロナウイルス対策はもちろん必要ですが,
それに紛れて,次々と民主主義や自由主義,個人の人権を侵害する
権力側の横暴を阻止するため,
ともに頑張っていきましょう!