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活動紹介憲法・平和:青法協・FSL活動

2013年7月31日(水)

【憲法講演】
立憲主義からみた自民党改憲案の問題点

弁護士:星野 圭

当事務所の弁護士は、様々な場所で憲法講演活動を行っています。
ご参考に、私があるところで講演した際のレジュメをご紹介いたします。

ここでご紹介するレジュメはかなり詳細なものですが、ご要望に応じてその内容は柔軟に、簡易な形で対応いたします。
また、時間も20分~120分程度まで、ご要望に応じてお話しいたします。
講演を聴いてみたいという方は、当事務所までご相談ください。

『立憲主義からみた自民党改憲案の問題点』

1 憲法は私たちの生活に関係があるのか?
a) 過労死事件【憲法27条、憲法28条、憲法13条】

過労死事件というものがある。働くことは憲法上の権利、その労働で死に追い込まれた。契約だから働かせて良い?命が脅かされても国は放置して良い?憲法はそれを許さない。だからこそ、労働者保護規制がある。国が責任をとるものとして労災制度がある。ある遺族は、過労死を招いた職場である地方自治体を訴えたことで、村八分状態となった。みんなが迷惑していると言われる。みんなのために黙りなさいと勧められる。「みんなのため」に黙らないといけないのか?違う。命は絶対に侵されてはならない権利。過労死事件について国として責任をとり、今後の発生を予防することは、命を守る国の義務の現われ。

b) 障害者差別【憲法13条、憲法14条、憲法27条】

とある市の職員が中途失明を理由に分限免職となった。処分自治体曰く、視覚障害者が職場にいると行政の効率性が害され、税金の適正な使用が害されるとのこと。すなわち、「みんなのため」に辞めてくださいというもの。あからさまな障害者差別。みんなのために辞めないといけないのか?違う。働くことは憲法上の権利であるし、障害の有無にかかわらず個人として尊重されることは人として有する当然の権利。生まれながらにして持つ権利。

c) 生活保護バッシング【憲法13条、憲法25条】

保存用ごはん1パックを3日に分けて食べる老女がいた。事情があって生活保護をいったん辞退した後、困窮した生活をつづけたが限界に至り、再度生活保護の申請をしたところ、役所から拒否された。支援の結果、再度の生活保護受給が決まったとき、老女は、皆さんにご迷惑をおかけして申し訳ないと言う。「みんなのため」にがまんすべきこと?違う。生きることは究極の権利であり、国家が絶対に守らないといけないこと。国の存在意義は、国民の命を守ること。

わが国では、国が国民の命を守るというその存在意義と対極の動き。

・政治的な流れ
2001~2006年9月 小泉内閣 聖域なき構造改革
    →生活保護引き下げはできなかった。医療費削減=自己負担増を実現
2011.12.14 社会保障改革の推進を閣議決定(菅内閣)
    →経済成長をうたい、社会保障が良くなるとした。社会保障・税番号制度。
2011.7.1 社会保障と税の一体改革成案が明らかに(菅内閣閣議報告)
2012.1.6 素案の確定(野田内閣閣議報告)
2012.2.17 社会保障と税の一体改革大綱の確定(野田内閣閣議決定)
→社会保障費削減と法人税減税、消費税増税を決定。

・2012年5月、生活保護バッシング-片山さつき議員、小宮山洋子厚労大臣
 → 生活保護引き下げ圧力、世論ができる。生活保護が国家財政を圧迫している、不正受給防止のために生活保護制度を抜本的に変えなければならないという雰囲気の醸成。併せて、社会保障費を削減する方向性と社会保障費の財源を消費税のみに押し込む動き。消費税に押し込むにあたっては、現行税率では税収が足りないということを喧伝。

・2012年8月、消費税増税決定(野田内閣)
→ 生活保護バッシングを契機として、世論の支持が高まり、生活保護制度の改悪と消費税増税までが極めてスムースに進行した。

・消費税増税の良し悪しは置いておいたとしても、何のために上げるのか、誰から取るのか、他の方策はないのかなどの検討が不十分。
→ 誰がお金を持っているのか。税収はなぜ足りないのか。

・消費税は国民全体からお金を集める。では国民はお金を持っているのか。
→ 労働者の賃金下落2000年=461万円、2011年=409万円(国税庁・民間給与実態統計調査)
 → 法人税収入2000年=11.7兆円、2006年=14.9兆円、2011年=7.8兆円(財務省の公表資料による)

・賃金と法人税収の低下は、不景気で企業の利益がないからか?
 → 全企業の内部留保(利益剰余金)は2000年=150兆円→現在おおよそ274兆円。(財務省・法人企業統計年表)
   → 資本金10億円以上の大企業の内部留保は現在約150兆円。

d) 「みんなのため」に個人は泣き寝入りしなければならないのか

国は誰のためにあるのか。

国家は「国家」という抽象的な存在そのもののためにあるのではない。まして、権力者のためにあるものでもない。国家は、国民のためにあるものであり、国民自身が作っているもの。国家のために国民が犠牲になるということを憲法は想定していない。「みんなのため」に、あなたは泣きなさいということは、個人の尊厳【憲法13条】を最大の価値とする現在の憲法上ありえない。

e) 表現(投票)による少数者の交代可能性こそが民主主義と 多数者独裁の違い

国民に国家を保護する義務はない【憲法99条】。逆に、国家にはその存立根拠である国民を保護する義務がある。

「みんなのため」にがまんすべきという考え方は危険。第2次大戦直前に世界中で蔓延した全体主義的な考え方と共通するところがある。「みんなのため」という考え方にはかなり注意しないといけない。そこでいう「みんな」とは何か、多くの場合、それは多数者のことであって、少数者は念頭にない。少数者への配慮、尊重を忘れることは、憲法上の価値の放棄にほかならない。

民主主義は、個人の尊重を基礎として、少数者に対し常に交代可能性を残すところに正当性がある。交代可能性を尊重しない多数者主義は、民主主義ではなく多数者独裁。

f) 憲法は、何から私たちを守っているのか?

→その答えが「立憲主義」の考え方

私の知る憲法は、人間味に溢れている。人の暖かみがある。人の汗と涙がある。憲法の条文を見ると、私もいろいろな原告の顔が思い浮かぶ。憲法は人で成り立っているし、人と毎日接しているもの。憲法は理想論?理想を目指すところがあってもいい。人間も目指すところをもち、理想をもつ。正に憲法は人間そのもの。これが今、根底から変えられようとしている。

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